【予防と対策】猫の下部尿路疾患や腎臓の病気について

猫の下部尿路疾患や腎臓の病気とは?フードでの対策と注意したいこと

猫は尿路結石など下部尿路疾患や、慢性腎臓病にかかりやすい傾向があります。愛猫がこれらの病気にならないように気づかい、万が一病気になっても悪化させないケアが必要です。

飼い主さんができるフード対策や日頃注意したいことを解説します。

猫に多い下部尿路疾患(FLUTD:Feline lower urinary tract disease)

下部尿路疾患は「膀胱から尿道までに生じる疾患や症状」の総称です。膀胱炎や尿路結石、尿道炎、腫瘍などが含まれます。

症状は?

下部尿路疾患では次のような症状が現れやすくなります。トイレ以外での排泄は、粗相と間違えやすいので注意が必要です。

  • 何度も尿をしたがるが、ほとんど尿は出ない
  • 血尿がでる(ピンク色の尿が出ることも)
  • 尿が白く濁る
  • トイレ以外で排泄する
  • 陰部を気にする、しょっちゅうなめる
  • 排泄のとき大声で鳴く
  • 長い間トイレにいる
  • 尿にキラキラとしたものが見える(尿路結石)
  • 元気がなくなる
  • 食欲が落ちる

原因は?

  • フード
  • 年齢
  • 去勢済のオス(尿道が細長くカープした部分があるため)
  • 肥満
  • 不潔なトイレ
  • 猫同士のトラブル、環境の変化などによるストレス
  • 怖がりな性格
  • 水分摂取が少ない

などが考えられますが、原因が特定できないケースもあります。

特発性膀胱炎

「特発性」とははっきりした原因が特定できない疾患に対して付けられる診断名です。ストレスや食事などさまざまな原因があると考えられています。治療しても、再発を繰り返す猫が多いことが特徴です。

尿路結石

尿路結石は尿道だけでなく、腎臓や膀胱、尿管にも結石ができる病気です。結石が尿管や膀胱を傷つけ、尿道に詰まると排尿ができなくなり尿毒症になる危険もあります。

「ストルバイト尿石」と「シュウ酸カルシウム尿石」が猫によくみられる結石です。尿にキラキラしたものが見えたら、早めに動物病院を受診することが大切です。

ストルバイト尿石

尿がアルカリ性になり、リン酸、マグネシウム、アンモニアが増えすぎてできる結石です。若い猫によく見られます。

シュウ酸カルシウム尿石

尿のカルシウムとシュウ酸が過剰に増えて結晶や結石を生じます。比較的高齢の猫に見られることが特徴です。

治療は?

療法食と薬で石を溶かしますが、うまく溶けない場合は外科的治療で結石をとることもあります。シュウ酸カルシウム結石は、食事では溶解しないので外科的治療が主流です。

尿道炎

細菌感染や、結石が尿道に詰まることが原因で生じます。血尿が出る、痛がる、陰部を頻繁になめるといった行動が見られます。尿道閉塞を起こさないためにも早めの治療が必要です。

慢性腎臓病(CKD)

腎臓は体内の老廃物を尿中に排泄するほか、体液のpH、浸透圧の調整、体内の水分量調節、ビタミンDの活性化や、赤血球の成熟のためホルモンの分泌などの働きをしています。

慢性腎臓病は、血液をろ過して老廃物を尿にする「ネフロン」が少しずつ壊れていく病気です。残ったネフロンが働いて尿を作りますが、負担が増えやがてほとんどのネフロンが壊れてしまいます。腎臓の機能が失われると、二度と元に戻ることはできません。

そのため体内には老廃物が溜まるようになり、さまざまな臓器に「尿毒素」として悪影響を与えます。

原因は、年齢、尿路結石症、腎臓の炎症、感染症などの原因などが考えられます。病気の進行は緩やかで、飼い主さんがなかなか気づけないことが特徴です。血液検査や尿検査で数値の異常が現れたときは、かなり進行しています。

慢性腎臓病でよくみられる症状

  • 多飲多尿 たくさん水を飲むようになり、大量におしっこをするようになります。尿の色や匂いが薄くなることも。
  • 毛のつやが悪くなってきた
  • 食欲が落ちてやせてきた
  • 嘔吐が増える
  • 口臭が強くなる
  • 口の中に潰瘍ができる

などがあります。

慢性腎臓病は、進行具合によってステージ1,2,3,4の4段階に分けられます。

ステージ1:症状もなく尿検査・血液検査とも異常がありませんが、一部機能が失われています。

ステージ2:多飲多尿が見られ、尿検査に異常が現れます。腎臓に残されている機能が30%程度になっています。

ステージ3:血液検査に異常が現れます。残された機能は20%程度になっています。

ステージ4:腎臓の機能は10%以下。血液検査に異常が現れます。

3,4までになると、老廃物の排泄が困難になり尿毒症が進行しています。嘔吐が増え、食欲も低下。口内炎などができやすくなります。毛並みのつやが失われ、元気もありません。

猫の下部尿路疾患・腎臓病対策「飼い主さんができること」

猫の下部尿路疾患や慢性腎臓病にかからないためにも、対策をおこないます。しかしどんなに注意したとしても、かかってしまうことがあります。その場合は悪化させないように、ケアをしていきましょう。

フードでできる対策

健康なときこそ食事が大切

健康な時から、良質な総合栄養食を与えます。高品質なたんぱく質が摂れ、ビタミンやオメガ3脂肪酸がバランスよく含まれたフードを選ぶことがポイント。食べすぎや高ミネラルのおやつの与えすぎにも注意します。

下部尿路疾患にかかったら

動物病院を受診し、獣医師の指示に従いましょう。回復しても尿石症は再発しやすい病気。ミネラル濃度が高いフードやおやつは控えたほうが安心です。

特に煮干しや鰹節など、リンやカルシウム、マグネシウムを多く含む食品は与えないようにします。尿路結石の生成を抑える下部尿路疾患ケア専用のフードを与えましょう。

慢性腎臓病のケア

年齢を重ねてきた猫には

症状がなくても7歳に差し掛かった頃から慢性腎臓病のリスクに備え、リンの配合を抑えた高齢猫用のフードを与えることがおすすめです。どれを選べばよいかわからない場合は、動物病院で相談しましょう。

慢性腎臓病と言われたら

動物病院を受診して、療法食が処方された場合は指示に従って与えることが大切です。慢性腎臓病にかかっても、療法食を食べさせることで症状が安定したというデータもあります。

下部尿路疾患・腎臓病どちらも気をつけること

食事だけでなく次のようなことにも注意しましょう。

定期健診を受ける

異常にいち早く気づくためにも、定期健診を受けましょう。連れて行くことがストレスになる場合は、まずは尿を採取してチェックしてもらう方法もあります。動物病院に相談しましょう。

水をこまめに飲ませる

適切な水分補給が、下部尿路疾患や腎臓病のリスクを低くすると考えられています。特に高齢猫は喉の渇きを感じにくくなることから、飲水量が減りがち。高齢になるに従い、腎機能の低下も増えるため水分をしっかり補給することは重要です。

猫が積極的に水分を摂れるよう、次のような工夫をしてみましょう。

  • 猫のひげが当たらない水入れにする
  • 水入れは毎日洗って清潔に
  • 家の中で猫の通り道に新鮮な水を置いて、好きな時にいつでも飲めるようにする
  • 流れる水が好きな猫には、湧き水タイプの自動給水器にする
  • 硬水のミネラルウォーターは与えない
  • フードを水でふやかしたりウエットフードを与える

トイレを清潔にする

猫はきれい好きです。不潔なトイレでは排泄を我慢することもあり、下部尿路疾患のリスクが高まります。まめに掃除をして清潔を保ちましょう。特に多頭飼いでは、トイレを思うように使えないこともあるので注意します。猫の数+1が理想のトイレ数です。

ストレスに注意

キャットタワーを置く、落ち着ける寝床を作るなど、気晴らしができるような部屋作りを心がけましょう。多頭飼いでは、いじめられている猫がいないか注意します。引っ越しなど、環境の変化の際も配慮が必要です。

まとめ

猫がかかりやすい病気に下部尿路疾患や慢性腎臓病があります。フードの栄養分や水分不足も原因になることがあるため、食事や水分補給に配慮することが大切です。トイレもいつも清潔にして、気持ちよく排泄できるようにします。

猫は自分の体調不良を隠したがる動物です。一見元気そうでも、排泄の様子を毎日観察し、定期的に動物病院で検査をします。いつもと違うと感じたら早めに受診しましょう。

参考資料

シンポジウム 「猫にやさしい獣医療 猫の特発性膀胱炎とその対処法、特に栄養学的管理について」星 史雄 ペット栄養学会誌 2014 年 17 巻 Suppl 号 p. 31-33

ドライキャットフードに鰹節を添加したときのストラバイト尿石形成に及ぼす影響 井上 達志ほか ペット栄養学会誌 2000 年 3 巻 Supplement 号 p. 18-19

「ネコの尿中ストルバイト結晶形成要因:ネコとウシの尿成分の比較」清水 紘子ほか ペット栄養学会誌 2006 年 9 巻 2 号 p. 76-81

啓発記事「猫における水分摂取の重要性」徳本 一義 ペット栄養学会誌 2013 年 16 巻 2 号 p. 96-98

犬と猫の栄養学 奈良なぎさ著 緑書房

ウォルサム小動物の臨床栄養学 講談社サイエンティフィク

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この記事を書いた人
伊藤 悦子(いとうえつこ)
麻布大学獣医学部環境畜産学科(現・動物応用科学科)出身。ペット栄養管理士・家畜人工授精師(牛)資格所持。動物医療発明研究会会員。2016年よりライターとして活動中。2019年よりNPO法人「NEWSつくば」記者。犬は5匹、猫は6匹の他にモルモットやセキセイインコ、文鳥などの飼育経験があります。現在は17歳になる茶トラの猫「りんごちゃん」を飼っています。